知ってて便利なアラビア語(パレスチナ・ヨルダン編)


*基本のあいさつ、返事*

アラビア語には挨拶の表現がたくさんあります。
遊牧民の多いアラビア半島で生まれた言葉、もてなしの文化に根づいてできた言葉だからかもしれません。
特にパレスチナ・ヨルダンでは状況にあわせて言う台詞、それへの返答などがだいたい決まっていて、
それを知っていれば地元の人たちに喜ばれ、スムーズに会話を交わすことができます。(「あんた、通だね?」って感じ?(^^))
イスラームの聖典「クルアーン(日本では『コーラン』と呼ばれることが多い)」を記した言葉でもあるので、
唯一神「アッラー」にまつわる表現も多いですが、異教徒が使っても特にとがめられることはありません。
表現のニュアンスの違い、使われる状況もあわせてまとめてみたので、参考にしてみてください。

”こんにちは” 「マルハバ(marhaba)」
 もっとも一般的なあいさつ。英語でいう「Hello !」のニュアンス。
(フスハーでは「マルハバン(marhaban)」だが最後のタンウィーンは口語では省略される。)


これに対する返事としては、「マルハバテーン(marhabaten)」(「マルハバ」の双数形、つまりダブル)、もしくは「アフレーン(ahlen)」(後述の「アフラン ワ サフラン」の変形)などが使われるが、単に「マルハバ」と同じ言葉を返してもOK。

「アッサラーム アレイクム('assalam 'aleikum」(字義どおりには「貴方の上に平安あれ」の意味)はより改まった印象だが、若い子でも使う。返事としては「アレイクム ッサラーム('aleikum ssalam)」。乗り合いタクシーなどで知らない人と一緒になったときなどに言いたい。

”おはよう” 「サバーフ ル ヘール(sabah l kheir)」(字義はちょうど「good morning」)
”こんばんは”  「マサーウ ル ヘール(masau l kheir)」(字義はちょうど「good evening」)
特に朝、もしくは夕方のみに使う。ただ上記の「マルハバ」は一日中使えるので、特にこちらを覚えなくてもよい。(語感としてはちょうど「Hello」と「Good morning」の違いのような感じ)

返事としては「サバーフ(or マサーウ) ル ヌール(sabah l nur)」(字義どおりには「光の朝」)
「サバーフ(or マサーウ) ル ワルド(sabah l ward)」(字義どおりには「薔薇の朝」)、などと言うが、冗談で若者が「サバーフ ル バンドゥーラ」(「トマトの朝」)、「サバーフ ル バタータ」(「じゃがいもの朝」)と言っているのも聞いたことがある。実は奥が深い???

”元気?( How are you?)”  「ケーフ ハーラック?(keif halak)」
(女性に対しては 「ケーフ ハーレック?(keif halek)」
複数の相手に対しては「ケーフ ハール クー?(keif hal ku)」)

もっとも基本パターンの尋ね方。フスハーで「カイファ ハールカ?」なんてきいたところで、愛くるしい瞳をいっぱいに見開いて、珍しそうにこちらを見つめる子どもたちには通じない。
でもアンミーヤでこう聞けば、ちょっとおっかなびっくりにこちらの様子をうかがいながら、条件反射のように「ハムドゥ リッラー(hamdu li lla)」(字義どおりには「アッラー(神様)のおかげで[元気]です」という意味)と応えてくれるはず。

※ただし田舎の村落部のほうに行くと、方言で「k」が「ch」に変わり、「チェーフ ハーレッチ?(chef halechi)」となるので注意。(ハイファ、ヘブロン、ベツレヘム近郊の村など。年配者に多いが若者も使う。)

「ケーファック?(kefak)」(女性に対しては「ケーフェック?(kefek)」
「ケーフ ハーラック」の短縮版。より仲のいい間柄ではこちらのほうが普通。他にもバリエーションとして
「ケーフ サッハタック?(kef sahatak)」(女性に対しては「ケーフ サッハテック?(kef sahatek)」(字義どおりには「あなたの健康状態はどう?」という意味)
「シュー アフバーラク?(shu akhbarak)」(女性に対しては「シュー アフバーレク?(shu akhbarek)」(字義どおりには英語でいう「What's new?」の感じ)という言い方もある。

答えかた →「クワイイス(自分が女性の場合は「クワイイサ」)」(字義どおりには「good」の意味)
「マブスート(mabsut)(自分が女性の場合は「マブスータ(mabsuta)」)(字義どおりには「happy」の意味)

「タマーム(tamam)」「ハムドゥリッラー(hamdu li lla)」「ハムドゥリッラー クワイイス」は、状態そのものを指していう内容なので、男女の区別はありません。(それぞれ字義どおりには「完璧!」「神様のおかげで[元気です]」という意味)(「ハムドゥ リッラー」はフスハーでは「アル=ハムドゥ リッラー」だが、口語では定冠詞の「アル」は省略される)

”ようこそ!(Welcome)”「アフラン ワ サフラン(ahlan wa sahlan)」
家にお客さんが来たとき、またお店で客引きをするときにも使われる(つまり「いらっしゃい!」も兼ねる)。 これとあわせて多くの場合、「タファッダル(tafaddal)」(女性に対しては「タファッダリ(tafaddali)」)と言われることも多い。こちらは「どうぞ!」といったニュアンス。
お宅の軒先まで来て立ち止まっていると、さらに 「フート(fut)」(女性に対しては「フーティ(futi)」!)もしくは 「ホッシュ(khossh)」(女性に対しては「ホッシィ(khosshi)」)といって家の中へ招かれる。これは「come in!」の意味の命令文だが、後者の方がやや田舎の方言?

”Excuse me”「イスマフリー(ismahli)」「ラウ サマフト(lau samaht)」「マーレーシュ(ma lesh)」
 
最初から丁寧な順に。「イスマフリー」は偉い人や改まった場所でしか使わない。(字義どおりには「Please allow me」)
レストランなどでウェイターさんを呼びたいときは「ラウ サマフト」で十分。(字義どおりには「If you allow me」)これは「お願いします」のニュアンスもあり、他にタクシーで行き先を告げるときなどにも使える。→<タクシーの乗り方>

「マーレーシュ」「Don't mind」の意味で、「ちょっとごめんね」とバスなどで座席を寄ってもらったり、道をどいてもらいたいときなどに使う。

※レバノンではウエイターを呼ぶとき「アミル マアルーフ!(amil maaruf)」と言います。
「ラウ サマフト」というのも通じなくはないはずですが、いまいち反応が悪いです。
  

”ありがとう!”「シュックラン(shukkran)」
 >”どういたしまして”「アフワン(afwan)」

日本語で「ありがとうございます」にあたる丁寧表現は、「シュックラン クティール(shukkran kutiru)」と言う。
「クティール(kutiru)」
はフスハーでいう「キャスィールン(kyathirun)」(「たくさん」の意味)のヨルダン・パレスチナ方言で、thの音がtに変わるという法則に基づく。
フスハーでの正式な言い方「シュクラン ジャズィーラン(shukuran jazilan)」はほとんど聞かれない。よほど改まった場か、外国人初習者のみの表現。

習慣について。日本人は小さなことに対してでもよく「ありがとう」を言うので、アラブ人からはちょっと妙に思われる面もあるらしい。「そんなに感謝しなくていいよ!」と友人からお手上げ気味に言われたことがある。
ただ、「シュックラン」(ありがとう)を言われると「アフワン」(どういたしまして)を言うのは、みな子どもの頃から厳しく躾けられるようで、ほとんど条件反射のように返ってくる。

また、イスラム教徒にとって、知人・友人を助けることは宗教的な義務ともされているため、「どういたしまして」の丁寧な言い方として「ハーダー ワージビー(hada wazibi)」と言われることもある。(字義どおりには「これは私の義務です」となるが、実際には「当然のことですよ」くらいのニュアンス)

 

※(パレスチナ・ヨルダンのみ)特別な場合の”ありがとう” 「イスラム イデイキ(islam ideiki)」
お茶などを運んできてもらったとき(お宅でも、レストラン・カフェでも)、またご飯をごちそうになったあとに、料理を作ってくれた人に対して言う言葉。字義どおりには「(神が)あなたの手に平穏をもたらして下さいますように」の意味で、手を使った作業へのねぎらいとして言われる。
「イデイキ(ideiki)」「イデイ(idei)」というのが「手」の双数形。「キ(ki)」が接尾辞としての「あなた」にあたる。フスハーでは「手」が「ヤッド(yad)」双数形が「ヤダイ(yadai)」となるが、アンミーヤではyがi化している。)
返事は「ウ イデイキ(u ideiki)」と言い、「and your hands(そしてあなたにも〔平穏がもたらされますように〕」の意味。

アラブ圏に共通の表現だと思っていたのだが、どうもエジプトやレバノンでは使われないらしい。
言ってみたものの、パレスチナ・ヨルダンでは当たり前の、「にこっ」(^^) という反応が返って来ず、さびしい思いをしてしまった。  

”そんなことしなくてもいいのに”「インタ(女性の場合は「インティ」) ムシュ ラーズィム タアマル(女性の場合は「タアマリ」) ヘーク」
お土産を持っていったり、サンドイッチを買ってあげたりしたときに「ありがとう」のニュアンスで言われる。別に嫌がっているわけではないが、相手の表情で判断した方が無難。恐縮気味に感謝されていることが多いが、「ありがた迷惑」と思われている場合も。ただアラブ人は、日本人と同様に、親戚どうしの訪問でも手土産を持参する文化がある。少し言われるくらいのほうが、印象は良いかも。アラブで「けち」はタブー!

この表現は、全く別の状況で、控えめな諌め、批判の意味で使われることもある。「そんなこと、するべきじゃないのに(you should not / need not do like that)」が直訳で、「するべきじゃないことをするから、そんなことになるんだよ」といったニュアンスになる。

”おめでとう!”「マブルーク!」
 >”どういたしまして”「アッラー ユバーリク フィーキ」
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